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oxfe

ご無事で何よりで

その後のことは、 何がどうなったのか分からない。
 我に返ってみれば、 匕首は取り上げられ、 投げ飛ばされ、
 がんじがらめに縛り上げられていた。
 身動き一つできない。
 耳をふさぐことができない。
 地獄だ周向榮

「丙姫様、 ご無事で何よりでした。
 こいつを牢にぶちこんでおきます。
 姫様は、 この場で 心おきなく発声練習をなさってください。
 明日の朝まで じっくりとなさってはいかがでしょう」
 どこから現れたのか、
 無表情な渋い二枚目が 耳を押さえながら、 音痴なドラ声に負けじと怒鳴った。
 周向榮耳を塞ぐことが出来ない凶悪犯にとっては、 地獄の二乗である。
 若い男前も居て、 取り上げた匕首を手にしたまま、 ちゃっかり耳を塞いでいる。
「た……頼む。 早く牢に入れてくれ」
 懇願してしまう凶悪犯であった。

「行くぞ、 銀次郎」
「はい、 為五郎様」
 凶悪犯を哀れに思ったのか、 自分たちが耐えきれなかったのか、
 二人は そそくさと凶悪犯を引き立てて去った。

「おぬしらは馬鹿か。
 朝までやっていたら 本番が出来ぬではないか」
 置いて行かれた丙姫は、
 周向榮残された時間を有意義に使って 練習したのだった。
 どこから聞こえるのか、 子どもが泣きわめく声が遠くから加わった。
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